第51回 2026年9月

これまで社長のエッセイに、ときどき登場してきた妹です。
今回は、そんな妹の目から見た江差のお祭りを綴ってみました。
今年の夏、久しぶりに【姥神大神宮渡御祭】に参加させていただきました。
この一月一話で何度も紹介させてもらっている【姥神大神宮渡御祭】は、今から350年前、ニシンの大漁を神様に報告し、感謝したことがはじまりと伝えられています。長い年月をかけて、江差の人々に大切に受け継がれてきたお祭りです。
子供のころ私はお祭りが大好きでした。太鼓や笛の練習が始まると、もう心はそわそわ、町のあちこちから聞こえてくる音に胸を躍らせていました。
お祭りこそが私の晴れ舞台。歌ったり、飛び跳ねたりするのが本当に楽しく、「お祭りのために一年過ごしている」と言ってもよいほど、夏の訪れを心待ちにしていたように思います。
ところが、中学生の頃からそのお祭りに距離を取るようになってきます。
英語を習い始め、海外ドラマの世界に憧れていた私は、太鼓の音が聞こえてきても「ふん。お祭りなんか」とカッコつけて、あえて気にしないように振る舞いはじめたのです。
思春期、反抗期だったのだと思いますが、そうこうしているうちにお店で働くことなりお祭りに参加もできなくなって、楽しさの記憶もいつしか薄くなって行きました。

それから数十年。今度は姪の付き添いとして、思いがけずお祭りの列に加わり、ともに歩くことに。
気温30度の中、町内を13台の山車が進んでいきます。
「暑い。」想像していた以上に、厳しい暑さです。普段、羊羹の品質を第一に考えた少し寒いくらいの環境で仕事をしているせいなのか、いまだにカッコつけて馴染めないでいる自分のせいなのか、真夏の日差しは余計に暑く感じられたのかもしれません。
やがて少し歩いたところで縁石に腰を下ろすと、地面のぬくもりがじんわり。
その瞬間、言葉にしがたい感慨が広がり、久しく忘れていた遠い記憶が体の中によみがえってきました。
少し荒いけれど、あたたかさのある人々の声。山車のブレーキのきしむ音や、車輪が地面を擦る音。真っ白い足袋が少しづつ色を変えていく様子。そして、手を振り、声をあげ、祭りと一つになろうとする沿道の人々。
思春期でカッコつけていた私が忘れてしまっていたお祭りの感動。
私の心に響く世界は、海外ドラマの中にではなく、こんな身近なところにあったのだと、今さらながらに思い出したのでした。

お祭りで山車(ヤマ)を曳く若衆たちが、訪問先の商店や関係者の家に入り、商売繁盛や家内安全、町の安泰を祈願する「切声(きりごえ)」。切声を歌いながら家々を訪れると、お祝いとしてご馳走やお酒が振る舞われ、江差の夏の風物詩となっています。 五勝手屋本店にも毎年来てくださっています。
何十年という時を経た今、懐かしさや過ぎ去った記憶が重なり、そしてとなりを歩く姪への愛おしさまでもが静かに溶け合っていました。まるで時間を超えて、過去の自分にそっと再会したかのような夏でした。
もし機会があれば、来年の夏はぜひ一度、江差のお祭りに触れてみてはいかがでしょう。きっと、どこか懐かしく、そして新しいあなた自身の夏に出会えるのではと思います。
私も姪っ子に「また来年の夏もお祭り誘ってね」と約束をしたくらいですから。
<追記>
この場をお借りして、全国から応援してくださるお客様、いつも一緒に働いている家族のような社員のみなさん。そしてあたたかく迎えてくださった江差町のみなさまに、心から感謝をお伝えしたいと思います。