五勝手屋本舗が生まれた江差町は、北海道の中で最も早く開港した港町のひとつです。江戸〜明治時代にかけては、日本海を舞台に活躍した北前船によってとてつもない発展・繁栄を極めます。その様子は「江差の五月は江戸にもない」とうたわれるほど、盛大で華やかなものでした。
わたしたちの祖先が江差の地に移り住んだのは、安土桃山〜江戸時代をまたぐ、慶長年間(1596年〜1615年)と伝えられています。
おかしづくりをはじめたのは江戸時代。ヒノキの伐りだしに来ていた南部藩が、五花手(ごかって)地区で豆の栽培に成功し、祖先がその豆でおかしをつくったことが今に続くあゆみの第一歩と聞いております。なお、この頃のおかしの材料には、はるばる日本海を渡って北前船で運ばれてきた砂糖と寒天がつかわれておりました。
独特の語感をもつ屋号【五勝手屋】は、豆がとれた五花手地区にちなんでいます。当初は五花手屋と名付け、やがて地域が五勝手村へと変遷するのに合わせわたしたちの屋号も【五勝手屋】となります。
ちなみに、もともとの【五花手】という言葉は、アイヌ語の【コカイテ】を由来とし、波のくだける場所、波の打ちつける場所をあらわすものと言われています。
さて、おかしづくりをはじめた江戸時代から数えると、ざっと二世紀近くの歳月が経ちました。しかし、初代・多助は創業年に頓着せぬまま、ときは明治を迎えていたようです。そのため五勝手屋本舗は、看板商品『五勝手屋羊羹』が誕生した明治3(1870)年を創業年と決めています。
江戸時代に生まれ、明治、大正、昭和を超え現代へ。そのとき、その時代ごとに、おいしいおかしづくりを心がけてきた代々のバトンは今、六代目の手に渡っています。