第49回 2026年7月

戦後から昭和30年代頃まで、五勝手屋が丸缶羊羹の原料にしていた【紅金時】という豆。3年前、この豆が江差町の取り組みで復活したことをきっかけに、当時の丸缶羊羹の復刻版【かつて】をつくりました。
そしてそのとき、過去があって、今の羊かんもあるのなら、未来の羊かん【これから】もつくってみたい。そんな思いで過去・現在・未来、それぞれの羊かんをつくり始め、【かつて】【いま】【これから】という名で毎年皆さまにお楽しみいただいています。
さて、そんな経緯でこれまでに2回つくった未来の羊かん【これから】ですが、先の6月、3回目となる【これから】が完成しました。
これまでの2回は、いつ来るかわからない未来を想像し、楽しみながらやらせてもらっていたものですが、今回つくった3回目は、漠然とした未来ではなく確定した未来の羊かん。来年つくると決めている羊かんをお披露目したものです。

なぜ確定しているかというと、原料の豆の都合です。
豆の品種改良は常なるもので、質や味は落とさず病気に強くて実りがよい品種へと都度ゆるやかに交代していきます。
今回はこれまで使っていた『大正金時』が『秋晴れ』という豆に変わりゆくとき。秋晴れによる丸缶羊羹の時代を見据えたものが今回の【これから】となりました。
ちなみに過去2回の【これから】も秋晴れを使った羊かんでした。1回目は“かさ増し”とされ禁忌になっていた豆の皮をグラインダーで細かく砕いて入れたもの。負のイメージを払拭するおいしさならば、という挑戦でした。そして、2回目は蜜漬けにした豆を粒あんにして羊かんに混ぜ込みました。では3回目は…?皆さまの期待に応えるもの、になっていると思います。

新しい羊かんをつくるときは、今までの五勝手屋がこうだったから、とそこに執着することはありません。常に今の感覚で、自分たちがおいしいと思うもの、楽しくつくれるものを軸につくっています。
そのことを思うとき、『述べて作らず 信じて古を好む』という論語が心に浮かびます。
さまざまな解釈がある言葉ですが、私としては、先人の知恵を徹底的に学び、信頼し、心がけること。そしてそれと同じくらい、それを楽しみ、発展していくことも大切である。この言葉をそんな風に捉え、実践して…いるつもりです。
【かつて】を心に刻みながら、【これから】を楽しく創造していく。新しい羊かん、ぜひ召し上がってみてください。