連載:一月一話

第19回 2023年11月

身近なところに、有名人。

若い頃に剣道をやっていたので、毎年11月3日は特別です。
なぜならこの日は、日本武道館で剣道日本一を決める【全日本剣道選手権】が開催される日だからです。経験者同士なら、大会翌日などは「見た?」「見た見た!」で話が通じるくらい、大切な催しです。

あるとき、スタッフに剣道経験者がいたことがあって、聞けば、そのスタッフと一緒に剣道をやっていた方がこの選手権の優勝者だった、ということがありました。直接の知り合いではありませんが、最も栄誉ある大会でトップを獲る、とてつもない実力を持った方がスタッフ越しに、案外身近に存在していることに、大変興奮しました。

その道の達人と呼べる人が身近にいた、という話では、【信号機マニア】の方が江差町で暮らしていたこともあります。あらゆるジャンルのマニアやオタク、フェチが登場する【マツコの知らない世界】というテレビ番組にも出演されたほどの方で、番組では全国各地の珍しい信号機を紹介していました。5年ほど前のことですが、こんな方が同じまちに暮らしているんだなと、そのときもとても驚きました。

そして実は私も、私の素性で人を驚かせたことがありました。東京の大学に通っていた学生時代、北海道旅行から帰ってきた友人が、なんと目の前で我が五勝手屋羊羹を食べていたことがあったのです。
当時、大学では実家が羊羹屋であることは伏せていましたが、慣れ親しんだラベルを見て、友人が「これ、おいしいんだよ」というのを聞いて、思わず「それ、うちの商品だ」と言ってしまったのです。私もびっくりしましたが、友人もとても驚いて、有名人を見るような目で私のことを見ていたのを覚えています。

皆さんのまわりにも、案外身近なところに、何かの達人やマニア、特別な一面を持った有名人がいるかもしれません。剣道の達人とまでは言わないにしても、信号機や羊羹のように長く続けていれば「継続は力なり」で、その世界にある、奥深い楽しみ方を知ることができるのでしょう。
もし、私のまわりにそんな方がいらっしゃったら、ぜひともこっそり教えてください。私の知らない世界の楽しみ方をお聞かせいただきたいと思います。