連載:一月一話

第20回 2023年12月

ジオラマ裏の内緒話。

聖歌隊が讃美歌を歌い、大通りでは賑やかなパレード。クリスマス色に華やいだ街で、人々はケーキやクリスマスプレゼントを手に、この特別なシーズンを楽しんでいます―。
五勝手屋では、数年前から12月に入ると【とある街のクリスマス風景】をテーマに、本店2階ギャラリーにて、ジオラマの展示を行っています。

…が、この約4m×3mもある大きなジオラマ、制作にひと月もの時間を費やします。今年も準備を始めていますが、非常に忙しい12月の菓子屋において、毎回制作は時間に追われ、非常に難航します。忙しく走り回るスタッフの目線も、いささか冷たく感じます。

とは言っても、お客様に喜んでいただけて、そしてそれが自分の励みにも直結しますから、この忙しさ(と、スタッフの目線)は乗り越えられます。
やるたびに、来年はこうしようああしようと計画し、モチベーションも高まります。新しい【ゴーストバスターズ】のシリーズや欲しかったマシュマロマンも、今年のために揃えました。

ただ、どうしても、何年やろうとも解消できない、つらいことがひとつだけあります。
それはジオラマを制作している間は「2階ギャラリーに必ず私がいることが周囲にバレている」ということです。

周囲にバレている―。これは、逃げ場がない、とも言い換えることができます。
普段は事務所で仕事をしていて、私の姿は外に見えていません。ですから、ちょっと忙しいとき、手が離せないときは、平たく言うと“いないフリ”をすることができます。ところが、2階のオープンスペースにおりますと、私の姿は隠すことができず、はっきり申し上げますが“居留守”を使えないのです…。

さて、そうしてより忙しさに拍車をかけながら、今年もクリスマスのジオラマが完成に近づいております。こんな裏話をスパイスに、五勝手屋渾身の作品を是非に是非にお楽しみください。