連載:一月一話

第26回 2024年6月

夏は夜。

和菓子の世界では、6月はすでに夏。そしてこの季節は清少納言が「夏は夜」と表現したように、夜に趣があると感じています。夜更かし、夜遊び、どこかうしろめたい開放感。夏の夜だけに感じる特別な情緒。

何年か前に、そんな夏の夜を表現した羊かんをつくりました。名前は【夜更けて】。
夜闇のような漆黒に、カラメルの苦さと甘さ。食感はトロリ。おかげさまで好評をいただいておりますが、私としても、とても楽しい羊かんができたと嬉しく思っています。

ちなみにこの羊かん、夏の夜という背徳的なイメージのせいか、私のなかでは「妖怪」がイメージされています。夜遅く、こっそり冷蔵庫の前に座り込み、むしゃむしゃと甘いものを貪っている。寝ていなければいけないのに…。夜遅くに食べてはいけないのに…。こんな連想からか「夜更けて」はイケナイおやつ、というイメージにもなっています。(決してイケナクないので、ぜひ召し上がってみてください)。

羊かんにも、頭の中に生まれた妖怪にも愛着があって、とても楽しい。とても楽しいので【夜更けて】の誕生以来、派生商品を考えることが増えました。
開催中の大丸札幌店での催事では、そうして生まれた夜更けてバージョンの【おとなの中花饅頭】を実演販売いたします。これもまた、楽しいお菓子です。
夏は夜。皆さまの夜のお供に、ぜひ添えていただければと思います。