連載:一月一話

第29回 2024年9月

五勝手屋羊羹、相関図。

ここのところ色々な方から「最近の五勝手屋さん、とんがってるね」「攻めてるね」と言われることがあります。褒め言葉として言っていただいてるのは承知の上ですが、人に悪く思われたくない性格の私としては、伝統を捨てたと勘違いされていないだろうかと少々心配になったりもしています。

たしかにここ数年やってきたことは、ドライイチジクの中に五勝手屋羊羹を詰めた『回/Re-Fruit』、フワフワのスフレ生地でつくる軽い中花まんじゅう『五勝手屋ロール』、あえて羊羹の腰を折ったやわらかくて苦いカラメル羊羹『夜更けて』など、伝統的な和菓子とは趣の異なったものがたくさんあります。

ですが、当然のことながら和菓子が嫌いになったわけではありません。むしろ好きだからこそ、今を生きる自分なりに和菓子づくりを楽しんでいるといった感じでしょうか。
五勝手屋の基本であり看板商品である丸缶羊羹は、糸で羊羹を切るという、そもそもが「とんがってる」商品です。物心ついたときからそんな商品を扱っているのですから、無意識のうちに「とんがってる」ものを求めていたのかも知れませんね。

さて、そんな「とんがってる」商品たちですが、基本の五勝手屋羊羹とどういった関係なのか、自分でも気になり始めたので図にまとめてみました。
こうして見てみると、やはり金時豆を材料とした五勝手屋羊羹こそが、私たちの基本なのだなとあらためて実感できます。

【五勝手屋 和菓子相関図】
五勝手屋羊羹(丸缶羊羹)を中心とした五勝手屋の和菓子。近年は、伝統的な和菓子を新しいカタチへと展開しています。

そう。ここ数年自分がやってきたことは、豆を砂糖で煮て寒天で固めるという、昔からある羊羹の楽しみ方の提案に他なりません。
「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」、「述べて作らず。信じて古を好む」どちらも孔子の言葉だそうですが、やはり基本には古い知識、伝統来な和菓子の技があります。

それが過去のものにならないように。
何より、自分自身が楽しんで和菓子づくりに取り組めるように、そんなことを大切にしながら日々、羊羹をつくっていけたらなと思っています。

ちなみに、9月2日(月)〜8日(日)の一週間、函館 蔦屋書店にて、『五勝手屋の擬音と擬態』というタイトルで展示、販売を行っています。
和菓子の食感や質感を表現したパネル、新しい和菓子をつくるときの試行錯誤などを綴った展示もありますので、お時間ある方はこの機会に是非お立ち寄りください。