連載:一月一話

第31回 2024年11月

五勝手屋、2つの秋。

ついこの間まで暑さと格闘していたのに、気づけば冬がすぐそこまで。年々『秋』を短く感じるようになりましたが、もどかしくも『○○の秋』というほど、楽しみが多いのもこの季節です。

「『ゴールデンカムイ(※)』に五勝手屋の丸缶羊かんらしきものが載っている」。漫画の人気が高まるほど、こうした声をあちこちから頂くようになりました。
気になりましたので、全巻購入して“読書の秋”を楽しもうと早速1巻から読んでみました。ところが、漫画のコマ割りの順番というのでしょうか、読む流れがわからなくて早々に脱落。漫画は子供のころに読んだドラゴンボール以来で、すっかり読み方がわからなくなっていました(苦笑)。
ただ、丸缶羊かんらしきもの、のページはしっかり拝見し、そこに確かに丸缶羊かんらしさを感じました。実際のところはわかりませんが、何はともあれご覧になった方が「五勝手屋では?」と思ってくださったことが光栄な出来事でした。大変に人気の漫画です。機会がありましたら、ぜひお手に取ってみてください。

“食欲の秋”としてはこの季節、紅金時『喜よ豆』の収穫があります。この豆はかつて五勝手屋が羊かんに使っていたもので、数年前から町ぐるみで栽培を進め、その後、喜よ豆による『復刻羊かん』の製造・販売に至った特別な豆です。昨年は凶作でしたが、今年は鈴なりに実って収量は申し分なし、たくさんの羊かんを作れそうです。

紅金時『喜よ豆』を使用した復刻の丸缶羊羹。復刻にあたっては、砂糖の一部をあえて焦がす、現在の羊かんより長時間練るなど、ガス釜や直火だった当時の製造環境での仕上がりを疑似的に再現し、昔の羊かんの味や風味に仕上げました。ラベルも当時のデザインを使用しています。

ところで、豆の栽培から羊かんとなるまで、この喜よ豆のプロジェクトは農家さん、町役場の職員の皆さん、五勝手屋、そしてお客さんと、地元の方々の協力や支え、つながりを元に進んでいます。2016年からスタートした取り組みですが、プロジェクトが進行するにつれ、いつしか顔の見える人たちと一緒にやれること、江差町という場所で、江差町のみんなで取り組めることに喜びを感じるようになりました。地元の方々と地元でもっと楽しみたい。愛着の育つ商売をしていきたい。自分の中にある、そんな思いに気づきました。収穫後の打ち上げで皆さんと一杯やるのも、とても楽しみな時間です。

未来は過去の積み重ねでつくられていきますが、復活した豆と復刻した羊かんから改めてまちへの愛着を感じる今、この愛着の積み重ねがどんな未来につながっていくのか、とても楽しみです。