第33回 2025年1月
あけましておめでとうございます。
本年も、五勝手屋をよろしくお願い申し上げます。
2025年の干支は、へび。
脱皮を繰り返し成長することから「挑戦」や「変化」にも前向きな意味を持つといいます。皮を脱ぎ捨て、新たな姿へ生まれ変わるその姿にあやかって、改めて、今年の五勝手屋は新しいお菓子づくりに挑戦をしたいと思っています。
と、抱負を語ってみたものの、ないものを生み出す、というのは本当に難しいことです。
「こういうものが売れそう」とか「これが流行っていますよ」とまわりの人たちから勧められるトレンドや成功事例にはとんと興味がなく、アイディアはもっぱら私自身の五感が頼り。
自分が本当に心から食べてみたいもの、つくってみたいと感じたお菓子をかたちにしようと努力したときのみ、小手先ではない納得のいくお菓子ができあがるように感じています。
ここ最近でいうと、たとえば【はかなし】や【夜更けて】というお菓子。
はかなしはどら焼きですが、焼く前のドロドロの液状生地を見て「コレそのものを食べたい!」と思ったことがきっかけになったもの。試行錯誤を重ねた末に既存のどら焼きとは一線を画す、ふわっふわの柔らかなどら焼きになりました。
また、カラメル羊羹【夜更けて】は、特に自分の中で達成感がありました。
五勝手屋羊羹をよりおいしくするには?、と考えていたこと、そして、個人的に砂糖の自由研究をしていたことが実を結びました。工程を新たに加えたことで、いつもの五勝手屋羊羹とほぼ同じ材料で、まったく異なる食感の羊かんが完成しました。
ところで、へびの脱皮から思い出しましたが「ソフトシェルクラブ」という脱皮直後のカニを殻ごと食べるシンガポール料理がありますね。まだ固くなる前の柔らかな殻の食感が好きでメニューにあると注文をしますが、この料理の「普段は食べられないものを食べる」というところもアイディアのヒントだなぁと感じます。
新しいお菓子をつくろうと視界をお菓子で埋めるのではなく、外をみて“食べもの”ではないもの、たとえば普段の暮らしの中の気に入った場所の雰囲気やすてきな音楽、きれいな景色、そうしたものをお菓子にできたら楽しいですね。
いつものことを続ける中にも新しい発見は潜んでいそうです。
新年、とりとめもなく語ってしまいましたが、挑戦し、奮闘し、新しい姿に脱皮する、そんな1年にして参ります。どうぞ本年も、五勝手屋をよろしくお願いいたします。