連載:一月一話

第40回 2025年10月

江差追分の流れるまちで。

“民謡の王様”とも言われる『江差追分』の全国大会が今年も9月に開催されました。“全国大会”というくらいですから、出場される方は江差町だけでなく、全国からいらっしゃいます。ちなみに、愛好家は日本各地に、支部は日本を飛び出し海外にもあるほどです。
私自身は聴く専門で唄うことはありませんが、長く唄い継がれ、広く愛されている理由を、聴けば聴くほど、年を重ねるほど感じます。深みがあって郷愁を誘う、わがまち自慢の唄で文化です。

大会期間中の3日間、江差のまちは追分一色になります。散策しているのか、出場される方があちこちを歩いていますし、大会の模様は一部のエリアの街灯放送でまちなかに流れます。放送は五勝手屋にも聞こえて来るので、3日間その環境で仕事をしていると、お金を数えるのを間違ってしまうことがよくあります(笑)。そして、大会が終わったあとには、追分の空耳が聴こえてきて、頭の中からしばらくその調子が消えないほどです。

大会の会場には五勝手屋の売店があるので、そこへ出向くこともあります。出場者の皆さんの歌声が間近に聴こえて、しみじみいいなぁと思います。

ただ最近は、正しく、間違えず、そつなく唄うことに高い評価がつくように感じて、個人的には、それがちょっと物足りないような、面白味がないような、そんなふうに感じています。少しハズしてもその人の個性が光っていれば点数をあげたい。減点式ではなく加点式で考えるのも面白い結果となりそうです。
ちなみに、江差の人にしかわからない、この風土で培われた「なまり」からくる発音が唄に滲み出ていると、より深みが加わって「うまいなぁ」と唸ってしまいます。

それにしても、江差追分に感じることは、五勝手屋のお菓子にも言えそうです。
そつなくきれいに、か、あるいは、きらりと光るオリジナルか。
どちらのお菓子もアリだとは思いますが、ただできれば、ミスの数で点数が決まる減点式でなく、きらりと光るポイントを見ていただく加点式で評価を頂ければ嬉しいな、なんてことを思いつつ、日々お菓子作りに励んでいます。